遅すぎた初恋
悲劇
あの薔薇園での出来事から、自分の感情をはっきり認めつつも、それでもまだ足掻いて、押し込めるものなら押し込んでしまえと、仕事に没頭した。秘書の榊も機嫌が良い。

解りやすく何処にでもある話しで、出会った時には、もう私は大人気なく彼女に恋をしていたのだ。まさかの一目惚れだ。

本当に「泡から生まれた女神」かと思うほど彼女の姿に魅了された。だが、弟の嫁だ。横恋慕だ。まだ、生まれたばかりの感情だ。

気付かないフリをしてに押し殺してしまえば、理性の方が勝る。彼女に近づかなければ、育つ事は無いと考えていた。

しかし、上手くはいかなかった。芽生えた感情はひとりで勝手にスクスクと育つ、意識をして止めなければ、自然に彼女を目で追う。近付きたくなる。触れたくなる。嫉妬も若干出て来る。邪な心へとまっしぐらだ。そして早くも失敗したのだ。目撃者でもいれば私は破滅だな。

もう当分は星羅には会うまい。会えない。と社長室で悶々と考えていた時にプライベートの携帯が鳴った。

母からだ。珍しい。仕事中の時間帯には絶対にかけて来ない人だから、少し怪訝に思って画面をタップする。

「もしもし、珍しいね。母さんから電話な…」

「広高ぁ!広高ぁ!」

「どうした?慌てて…」

「……………………。」

「……………………。」

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