遅すぎた初恋
と、かなり取り乱した様子で私にしがみつくので、その言葉を受けて最初は戸惑ったが、ぽんっぽんっと優しく彼女の頭に手を置き「分かった、行かないよ。」と宥めてやると、気が抜けたのか今度は彼女が気を失った。

トキさんが言うには、いつものように、言葉の応戦をしている最中に、私が目の前で倒れたものだから、星羅はかなりショックを受けたらしい。
それでも、大柄な私をトキさんに手伝ってもらいながら、ベッドまで運んでくれたようだ。

「「妊娠もしてらっしゃるから、運ぶなんて無理ですよ。榊さんが来るまで、広高坊ちゃんをこのままにしときましょ」って申し上げたのに、「運ぶ」の一点張りで、やむなくベッドまで運ぶのをお手伝いさせて頂きました。
星羅様は華奢な割に力持ちでいらっしゃる。でも、妊娠中はやめて頂きたいものです。」と感心しながらも無茶な方で困ったという態度で私に話す。

確かに、海堂さんに付いて重い機材を持って、山に登っているぐらいなのだから、星羅にとっては大丈夫な範囲なのだろう。
だが妊娠中だ、重い物を持つのは控えさせないと。

「かなりご心配の様子で、ずっとベッドに張り付いてらっしゃいましたよ。」
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