遅すぎた初恋

2

本州に戻ってからの弟夫婦の行動は早かった。

約束通りアトリエは引き払って、高柳家に戻って来た。

我々の家は関東圏にはあるが、東京に出るには少し不便な所で、私は都心にマンションを所有し、会社を行き来している。

高柳家の家は古くからある為、敷地も広く、弟夫婦が住む事になった別棟は敷地内ではあるが本宅からは少し離れて建っている。

別棟は元々あった薔薇園を縮小して、私が趣味の為に建てさせた白い小さな洋館だ。
それでも、 夫婦二人だけなら十分な広さだ。

薔薇園も縮小したといっても、季節が来れば見事な薔薇を咲かせる。

同居ではないのだから母とも気兼ねなく過ごせる環境だと思う。

母は弟の妻をまるで娘のように可愛がっている。自分の経験値から女性に必要な所作や知識を彼女に惜しみなく教えている。
彼女も嫌がらず何でも素直に受け入れるのだから、尚更だ。
「今の時代女性もちゃんと自分の意思を持って好きなことはするべきよ。男になんて傅かなくていいの。」

と、喫茶店の仕事は辞めたものの、マスターと写真を撮りに山に登る事は母の意向で許された。
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