遅すぎた初恋
初恋
クリスマスの夜、犯罪者に成り下がって逃げて帰って来た日から鬼のように働いた。
年末年始も仕事に明け暮れてやった。
榊が「やる気があって大いによろしい。こんだけ出来るんなら、まだ無理をかけても大丈夫ですね。」なんて言うから尚更だ。もちろん、実家になんて帰ってない。帰れる筈もない。

榊によれば、星羅も変わりなく母子共々順調らしい。これに関しては心から安堵した。
私のせいで流産でもされたらと、気が気ではなかった。
「 彼女自身に何か変わったことはあるか?」と尋ねるが「何も?普段通り、ゆかり様の手伝いやら吉爺やトキさんにべったりらしいですよ。」と言うと「何か気になる事でも?」と逆に聞かれるので、やめた。
あんな酷い事をしたのに変化がないなんてあるか?星羅の事だ、無理をしているのだろう。
私は最低だ。また、悶々と彷徨い始めた。
やめだ。やめだ。もう関わらん。母達が居れば大丈夫だ。

「そうそう。望様が叶様に引きずられながら、星羅さんに謝りに来たそうですよ。もう、きっぱりと諦めたとかなんとか。性根を入れ替えて頑張りますって。広高に負けないぐらいに自社を大きくするって宣言していったそうですよ。望様ご自身も良く出来る方なのに、親の対抗意識をそのまま植え付けられて育ったばかりにお可哀想ですね。本気を出したら、広高さんの方が食われそうですけどね。なので、社員を路頭に迷わせる訳にはいかないので、頑張って下さいね。」
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