遅すぎた初恋
泡の女神
出会った頃のように、光り輝く浜辺に、星羅が隆海を抱いて佇んでいる。そこにピッタリとセントバーナードのジョンが、守るように従っている。
遥か水平線を眺める姿は、本当に美しい。
誰をも魅了する泡の女神。思わずシャッターをきってしまう。今まであまり人物は撮らなかったが、私の家族は別だ。

抱かれるのに飽きてきたのか、隆海が降ろして欲しいとごそごそし始めた。私が寄って行くと「たぁた。だっこ」と言って手を出して来た。
私が抱きかかえて下に降ろしてやると、嬉しそうに声を上げてテケテケと走って行く。

波にさらわれては困ると、慌てて追いかけようとすると、ジョンがすかさず、かけて行って隆海の服を引っ張る。
大きく尻餅をついた隆海が泣きだして。私が抱きかかえて砂を落としてやると、ジョンに向かって「めっめっぇ。」と言っている。
私は反省気味のジョンの頭をえらいえらいと褒めてやる。とジョンは星羅の方にかけて行った。

「星羅、あまり海風に晒されて冷えたら、お腹の子に悪いだろ。もうそろそろ戻ろうか?」

「大丈夫よ。暖かいんだし。大丈夫よねえ?」

と、お腹を優しくさすりながらまだ生まれぬ我が子に話しかけている。

「やっと来れたんだし。もう少し眺めさせて。」
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