副社長は今日も庇護欲全開です
斜め前の席の真美香は、パソコンの側から顔を出している。

「うん。ありがたくも、私の改善案が通ったみたい」

改めて、口に出すと気恥ずかしい。控えめに答えると、真美香は興奮を抑えるように言った。

「副社長に会えるんでしょ? 羨ましい」

「え?」

真美香のうっとりしたような口調に、呆れてしまい言葉が出ない。すると、彼女は身を乗り出さんばかりに続けた。

「今、社内での一番人気は真中副社長だから。もし親しくなったら、絶対に紹介してね」

そう言われ、思わずため息が漏れる。軽く真美香を睨んでみたけれど、彼女は全く気にしていないみたいだ。

「仕事で関わるだけなんだから、親しくなるはずないじゃない。だいたい、真美香は彼氏いるでしょ?」

「そんなの、この間別れたもん。だから、金曜日にコンパしたんでしょ?」

当たり前のように言われ、ますます呆れ返ってしまった。だからといって、私まで巻き込まないでほしい。

「とにかく、仕事だから。期待しないでね」

まったくその気のない私は、真美香に釘をさしたつもりだったけれど、彼女はまるで聞いていなかった。
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