副社長は今日も庇護欲全開です
ドキッとするくらいに、副社長が一瞬見せた微笑みが優しくて、情けないほどに意識をしてしまう。

だけど、彼のほうに他意はないのだから、すぐにいつも私たちに見せているクールな表情に戻った。

そして、資料を眺め始める。副社長が見ているのは、私が提出した改善案の原本らしかった。

「下村さんの仕事は、広報部だったな。実は、この案を貰うまで、きみのことを知らなかった」

「はい。広報部で、主に社外向けの宣伝などを携わっています」

副社長が、私を知らなかったのは当然。一社員でしかない私を、知っているほうが不思議だ。

「そうみたいだな。広報部長と課長から、下村さんの仕事ぶりを報告してもらっている」

そう言いながら副社長は、テーブルに置いてあるタブレットを操作し始めた。

副社長って、指が締まっていて長い……。間近で改めて彼の顔を見ていると、真美香や他の女子社員が騒ぐ気持ちも分かる。

スッと上がった眉に、少し垂れた目元。鼻筋は通っていて、適度に厚みのある唇。

バランスの整った甘いルックスで、思わず副社長を見つめてしまっていた。
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