副社長は今日も庇護欲全開です
「えっ……? でも、周りに知られては、いけないんですよね?」

戸惑いつつ彼を見ると、優しい眼差しで見つめ返された。

「陽菜を、父に紹介していなかったからな。でも、いつまでもこのままではいけないと思っている」

「直哉さん……」

お父さん……ということは、真中社長にお会いできるかもしれないということ?

それを考えるだけで緊張してくるけれど、彼の本気の想いが伝わってくるようで嬉しかった。

「近いうちに、きみを紹介したいと思う。いいか?」

「はい、もちろんです。私も社長に、ご挨拶をしたいと思っています」

そう答えると、直哉さんは私に笑みを向け、車を走らせ始めた。

いつか……、できれば近い未来に、社長に紹介してもらえたらいいな……。

そのときまで、自分をもっと磨いていこう。

「陽菜、お腹空いてる?」

ふと聞かれ、一瞬間を置いて答える。

「そうですね。少し……」

マンションから離れていくところを見ると、お部屋へ行くわけではないみたい。

「じゃあ、カフェに行こうか? 今日は、服を見たかったんだろう? そのあと、店に連れていくよ」

そう言われ、思わずクスクスと笑ってしまった。

「私のために、直哉さんが動いてくれる必要はないんですよ。いつも、私のことばかり。今日は、直哉さんが行きたいところに行きませんか?」
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