泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
世界は悲劇なんてありきたりな言葉ではとても表しきれないくらい残酷で。本当に、最悪以外のなにものでもなかった。
……神様は残酷だ。
あいつはただ、現実に耐えきれなくなって自殺しようとしただけなんだ。
それなのに病気になって、窮地に追い詰められて。
……俺を助けようとして、命を落とした。
そんな結末、本当に辛すぎる。
爽月さんは部屋の隅に置かれた引き出しを開けると、そこから小さな瓶を取り出して、テーブルの上に置いた。
「……この瓶の中には、赤羽くんの精子が入っている。
子供が生まれる確率がないとは言わない。けれど、生まれない可能性もある。
恵美ちゃん、……全ては君の好きにするといい」
「……はい」
恵美は涙を拭って、瓶を手に取った。
それから俺達は爽月さんにどうにかお辞儀をし、
五人で順々に部屋を出て、家を後にしようとした。
「空我くん!!」
爽月さんが走って来て、玄関にいる俺の肩を掴む。
「……なんですか」
「死のうなんて考えるなよ。君が死んだら、奈々絵くんの努力が全て無駄になる」
「……保証はできません」
俺は爽月さんの腕を振りほどいて、家を出た。