泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。


「空我!!」

走っている俺の後を潤が追ってくる。

「……潤」
潤は俺の腕を掴んだ。俺は足を止めて、潤を見た。

「空我」

潤は俺の瞳から出ている涙を、そうっと拭った。

「……潤、純恋と恵美は?」

「恵美が産婦人科にいくっていったから、純恋はそれに付き添わせた。……何?俺じゃなくて純恋に追いかけられたかった?」

「いや、潤でいい。純恋にこんなとこ見せたくないし」

愛する女に泣き顔なんて見せたくない。弱いとこなんて晒したくない。

「……そうか」

「……ああ」

俺は小さな声で頷いた。

「……なぁ、潤、俺、虐待されたままの方がよかったのかなぁ」

「は? 何言ってんだよ!それでよかったわけないだろ!」

潤は俺の両肩をゆさぶって、大きな声で叫んだ。

「……いいんだよ。だって俺が虐待され続けてたら、あいつはあんな早く死ななかった」
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