泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
「……ただいま」
「おかえりなさい、空我。帰ってくるの遅かったわね」
家に帰ると、母さんが出迎えてくれた。
「……二者面談があった」
小さな声で、俺は呟く。
母さんは仕事を辞めて、俺の面倒を四六時中見てくれるようになった。
それには感謝しているし、いつでも話せる環境になったのは正直嬉しい。でも、やっぱり嬉しさより怖さの方があって、俺はちゃんと会話をする気になれない。
「そ。まだ2年生なのに、大変ね。あ、一応言っておくけど、空我は医者にならなくてもいいんだからね。まぁお父さんは継ぐって言われたら喜ぶと思うけど、空我の好きにしていいわよ」
そう言って、母さんは俺の頭に手を近づけてくる。
殴られるのかと思って、俺はついその手を思いっきり振り払ってしまった。
「空我……」
今にも泣きそうな顔をして、母さんは顔を伏せる。多分、俺の頭を撫でようとしたんだと思う。
「……潤の家行ってくる」
その場にいるのが嫌になって、俺は逃げるように家を出た。