泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
「はぁっ、はぁっ、はぁ」
近くの公園にあったトイレにかけこんで、俺は吐いた。
――やめてくれ。悲しそうに目じりを下げないでくれ。あたかも自分が被害者みたいな顔をしないでくれ。
被害者はこっちなのに。
泣きたいのはこっちなんだよ。
「うっ……」
苦しい。煙草と酒を辞めても、ゴミ捨て場から飯を探すのも辞めても、嘔吐はする。
ストレスが原因だからだ。
自分の心が嫌になる。
ずっと母親の愛が欲しかったくせに。
十一年も求めていたくせに、いざ手に入ると、本当に手に入ったのか信じられなくなってしまうなんて。
「奈々絵……」
口から出たのは死んだ親友の名前だった。
生きてたら、きっと今すぐにでもここに来てくれるのに。
ハッカーなんだし、それくらい簡単にできるだろう。
――会いたい。
ずっとそばにいてなんて言わないから。お前の命を奪ったのは俺だ。そんな奴に、求める資格なんてない。それでも、一目でいいからまたあいつの顔が見たい。
泣いてんじゃんって、呆れ顔で言われたい。
そんなの実現するわけないが。