優しい音を奏でて…優音side

「うち来るんなら、部活ん時に言って
くれれば、まっすぐ一緒に帰ってきたのに。」

「無理に決まってるでしょ?
ゆうくん、もうちょっと、自分の立場を
自覚してよね!」

「ん? 何々? 奏ちゃん、立場って何?」

「葵ちゃん、知らないんですか?
ゆうくん、女子にモテモテなんですよ。
ゆうくんと仲良くすると、私が
いじめられるんだから。」


おいおい、それはお前も同じなんだけど。

奏は、俺以上に無自覚だから、困る。

まぁ、奏に関しては、抜け駆けしないように男子の間で協定を組んでるから、知らなくても仕方ないけどね。

「えぇ〜!? こんなわがまま優音が?
奏ちゃん、そんな子たち蹴散らして、必ず
優音のとこへお嫁に来てね。」

うんうん。母さんもたまにはいい事言う。

「えぇ!?
葵ちゃん、私、まだ死にたくないんですけど。」

と奏は笑う。

はぁぁぁぁ………
奏は、嫁に来る気はないのかぁ…

「で? ケーキは、いつできるの?」

「今から、焼いて冷まして、それから
デコレーションするから、2時間後かな?
デコレーションする時に呼ぶから、奏ちゃん、
優音の部屋で遊んで来ていいわよ。」

おお!!
母さん、今日はいいパス出すね〜。

「じゃあ、ゆうくんにお勉強教えて
もらおうかな?」

「いいよ。来いよ、奏。」


奏と俺の部屋で2人きり。
あんな事やこんな事…
いけない妄想が頭をよぎる。

だけど、所詮、小心者の俺。
肩を寄せ合って、真面目に勉強を教えてやった。

でも、ほんのちょっとの身動きで、肩や腕が触れ合って、それだけで心臓がバクバク音を立てて暴れ回る。

その度に平気な顔を取り繕った。
< 24 / 98 >

この作品をシェア

pagetop