くまさんとうさぎさんの秘密

くまさん逃げる

by 宇佐美 優那

バイトが終わって帰宅しても、くまさんは、まだ眠っていた。名前を読んでも起きないので、部屋をのぞくことにした。
「緊急事態」

くまさんは、今朝出掛けたときのまま。ピクリとも動かないけれど、大丈夫だろうか、、。一回起こした方が良いだろうか。。
ちゃんと呼吸はあるんだろうか。。
彼の鼻先に顔を近づける。呼気が感じられて、安心し、ため息をついたら、かれのまつ毛が揺れた。それで、ふと、魔が差した。。
私は、そっと彼の下唇に自分の唇を触れさせた。
彼は、目を覚まさない。
何で、そんな気になったのか、私は、彼の下唇をそっと唇で食んだ。

その時、彼の手が、突然私の体を引き寄せる。
「きゃっ」と、私は声をあげた。起き上がったくまさんは、思いっきり私を抱き締めていた。
私は、くまさんの腕の中に収まった。
「起きてたんだ。。」
「今、目が覚めるようなことされたんだよ。」
「ゴメン、、、。」恥ずかしいなんてもんじゃない。恥ずかしすぎ。
「お前、俺のこと好きなの?」
空気が固まる。
「ああ、もういいや。俺が卒業したら、ちゃんと嫁に来てくれる??」
息がつまって返事ができなかった。
「私のこと、苦手とか、嫌いじゃないとか、気のないこと言ってたじゃん。」
「それは、女子として意識しすぎて落ち着かないってことだよ。それに、お前の進路も決まってないのに、こういうことで縛り付けたくもなかったし。。始めは、困ったから頼られてるだけと思ってたし。今はギブアンドテイクで良い関係だって。。」

「くまさん、本当に恋愛に興味ないのかと思ってた。」
「そういう訳じゃないよ。」
「私はね。。」ちょっと迷ったけど、もう、さっきのでバレてる。
「私は、くまさんの1番近くにいれて、それだけでも幸せ。」
沈黙が流れた。すべった??
「昨日、いろんな人に、お前との関係について確認されたよ。宇佐美のお父さんが、お前は俺んとこに嫁にやるって言ってた。」
「お父さん??お母さんじゃなくて??」
「そう。お父さん。」
「まさか。」
「何か、いろいろ見てて気がついたんだけど、お前んち、お父さんの方が、こうと決めたら手段選ばないんじゃないか??近所でも、お前は花嫁修業中ってことになってるらしい。」
近所と言えば、保育園の園長先生から、「お嫁さん」というワードが出ていた。園長先生は、仕事にはプライドを持っている人だし、他にそういうことを言われている人もいない。誉め言葉ではあるけれど、何か、違和感みたいなものは感じてた。

「うちの家族が、何か変なこと言いふらしてたらごめんね。。責任取れとか、私は言わない。第一、私が勝手に転がり込んだ訳であって、くまさんは迷惑してると言うか、、」

くまさんは、ため息をついた。

「俺、お前のこと「女子として意識しすぎて」って言ったよな。俺は、、正直、寝込み襲った責任とってほしい。俺に何の性欲もないワケじゃないよ。やらないって決めてたけど、時々めちゃめちゃ刺激になっちゃうようなこともあって、男の事情としては、焦らされまくりだろ。」
「そんな事ありましたか??」
「さっきのことに限らず、ありまくりだっっっ。エロいんだよっ、、。」と、くまさんは言った。
「服がはだけてるとき、うなじかきあげる仕草、おんぶしたら背中に胸の感触、浴衣姿、フランクフルト食ってる口元、ちょっとしたことなのに、体が反応して大変なんだよ。男子は。」
「そうなの??やらないように気を付けるよ。。」
「いいよ。止めるなよ。気にすんなよ。それだけで責任とれとか、俺だって言わないよ。」
「そんなの、聞いちゃったら、恥ずかしくてできないじゃん。めちゃめちゃ意識しちゃうよ。。」
「止めるなよ。恥じらってみせろよ。恥ずかしがらせたいでしょー。男なら。恥ずかしがりながらやってくれたら、メロメロ。」
だんだん部屋の温度が上がる。
「ダメだ、、。宇佐美がエロいんじゃなくて、俺がエロオヤジなんだって今気がついたわ。」と、くまさんは言った。
「違うよ。。」私は、くまさんの耳元に唇を寄せた。
「足元やら、首回りやら、くまさんの視線感じたら、胸がキュンてする。おんぶしてもらったら、胸に背中の感触感じたい。手つないでくれたり抱きしめられたりしたら、別のところさわられたくなったり。、、フランクフルトはちょっと分からないけど。」
「分からないことは、分からないままで良いよ。」
くまさんは、頭をかりかりとかきむしった。
それから、、
「やっぱり、嫁に来いよ。責任とれ。どこさわられたいって??」と、続けざまに言った。「ナイショ。」私は、いたたまれなくなって、目をふせ、横に視線をそらした。





























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