くまさんとうさぎさんの秘密
くまさんとうさぎさん
by 宇佐美 優那

くまさんは、祭りの後、熱を出して寝込んでしまった。
私は午後からバイトで、帰宅が遅い。朝は、ひとみさんのところにも行きたい。
何かあったらすぐに連絡してほしいとは伝えたが、
「ただの夏風邪だから、気にするなよ」ということだった。
まあ、夏休みで良かったとも言える。

くまさんは、ひとみさんの左手の麻痺のことに、まだ気がついていない。ひとみさんは、左手の神経の一分が途絶えていて、拳を握れるけれども広げられない症状に悩まされている。リハビリが始まったらしいけど、悲しくても興奮しないように気を付けているということだった。
折り紙は無理だけど、鍵針編みならできそうということで、編み物の道具を届ける話になっていた。

病院に行って、ひとみさんのシャワーを手伝って、家に帰って来た。
「緊急事態」
くまさんの部屋をのぞくと、彼はすやすやと眠っている。
改めて、綺麗な横顔だと思う。

そのまま、バイトに出かける。今日は、おあずかりのはずが、お熱で来れない子が数名おり、夕方の児童数も少なかった。
帰り際に、園長先生が言った。
「優那ちゃんが入ると、本当に食事風景が落ち着くわ。優那ちゃんは、本当に良いお嫁さんになるわ。」
「良い先生」ではなく、「お嫁さん」という言葉にちょっと敏感になる。私の就職第一希望は、ここだ。できるなら、一生この街で、小さな子どもたちと、頑張るお母さんたちと、寄り添って行きたい。
ちょくちょくくまさんが迎えに来てたようなこともあったし、やる気アピールに、ちょっと失敗してしまってるのかもしれない。。

今日は、くまさんも体調が悪いし、大慌てで家に帰った。





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