くまさんとうさぎさんの秘密

小熊さんたち

くまさんは、リビングを出たあと、そのまま私の部屋についてきた。

くまさんは、普段は紳士だ。23まで彼女作らないというのは、カナダのひとみさんのご実家の考え方だそうだ。ひとみさんの母親は日系の女優で、戦後の映画でちょっと有名になった美女とのことだ。ひとみさんのお父さんはイギリスとイラン人のハーフで、ご実家の教育はイギリス式だったそうだ。でも、お母さんの影響で、茶道も着付けも習っている。あちらは、子どもの頃からカップルで参加するとか、エスコートが必要という場面があるものの、二人きりにならないとか、そういうことについては、かなり厳しかったらしい。
くまさんも、女の子と部屋に二人きりになっても、絶対に扉を開けておく。それに、いつも必ずさりげなく扉を開けて、進路を譲ってくれる。

この日は、多分、くまさんは相当慌てていて、私の部屋についてきて、私を部屋に押し込むと、後ろ手に扉を閉めた。らしくないほど、慌てていて、つられて私もどぎまぎした。

くまさんは、小声で言った。
「前嶋さんはさ、ひとみにぞっこんだよ。惚れ込んでる。間違いないよ。ひとみが一言頼れば、何だってすると思う。それこそ、あいつ殺してくれとかでも聞いてくれそうなくらい。」と、くまさんが言った。

「お腹に赤ちゃんいて、ちゃんとママになろうとしてる人は、誰かを殺してくれとか頼まないよ。絶対。言いたいことは分かるけど、ちょっと前嶋さん怖いよ。。安定期まで無理できないと思うよ。」
前嶋さんには助けてもらっているが、女性から見てちょっと怖い印象も消えない。
「俺、前嶋さんがどんだけショック受けるか、そっちに意識がいくわ。ひとみに入れ込みようって、俺にまで嫉妬しそうな勢いだったし。。」
「くまさん、ひとみさんの子どもでしょ。くまさんの言ってることが本当なら、子どもの父親候補としては考えちゃうかも。。二人目の子どもができたら、安心して一人目の子ども預けられる人じゃないと。」
「宇佐美の意見は、男としてしっかり覚えとくよ。でもさ、お前だって最初は俺とひとみのこと勘違いしただろ。。」

「ここで求められてるのは、「全力でお守りします」とか、そういうことだから。そもそも、もしかして、もしかしてだけど、今回のことも、前嶋さんにの方に押し付けがあって起こった事だったりしない?もし、ひとみさんの方も好きだったとしても、この一線から先は言いなりにはなれないっていう一線があるのよ。女の人は、自分と自分の体守らなきゃだから。」






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