くまさんとうさぎさんの秘密

魔法使いの帰還

by宇佐美 優那
「義明、連休は帰らないわね。」と、ひとみさんがずっと言ってた。ひとみさんは、お腹が目立つようになった。
仕事をやめてから、本当に穏やかな顔をしている。

私も、連休は保育園の時間外保育のバイトを頑張らなければならなかった。ちょっと辛いと思っていたから、最終日は、お休みをもらった。この日は寝ようと思っていたのだが、よりによってこの日に、お客様が押し掛けた。
ゴールデンウィークの最終日、私が部屋で寝たきりになっていると、リビングの方で人声がした。くまさんかと、思ったので、部屋着のまま、でも、ちょっと髪の毛だけ可愛くなおしてリビングに行ったら、これが、お店の前オーナーさんだった。
「ひとみちゃん、俺、ひとみちゃんにひどいことしたか？」オーナーさんの目のはしから、涙が伝った。
ひとみさんは、黙っていた。
「あいつは母親には可愛がられなかったし、すさんでたけど、ひとみちゃんが一緒についててくれればまともにやると思ってたんだ。心が弱いとこがあるのも認めるし、くまさんと比べられちゃどうしようもない。情けない男に見えるかもしれないけどさ。、？ひとみちゃんの事だけは本気で考えてるんだと思うんだ。」
親というのは、どうしようもない生き物だ。
前嶋さん本人とは、ひとまず出産までの話はまとまっていた。
前嶋さんのプロポーズだが、ひとみさんは、断ってしまった。前嶋さんには、ひとみさんの体調の事は話してあったので、前嶋さんも、無茶苦茶はしなかったが、元々行動の人だから、何もできないことには相当ストレスをためていたと思う。

差し出がましいのは百も承知で、私は、前嶋さんに、囁いた。「別に、他の人と何かあるわけじゃないですよ。ひとみさん。」前嶋さんは、ふられてかっこつかない後だったが、私の肩をポンポンと叩いて、二回頷いた。

みんな、店も親戚も、ある意味このカップルを応援していたが、前嶋さんに忍耐が求められていることは、間違いなかった。好きすぎてもうまくいかないというか、好きにしたいすぎな欲の好きと、相手を思いやる気持ちが全く別物だということに、この二人を見てて気がついた。
オーナーさんは、泣いてた。
「俺に、孫抱かせてくれよ」
「ぜひ、お願いします。」と、ひとみさんも泣きだした。心が凍りついているよりは、涙が流れた方が良い。

認知はするということで話はついていたけれど、実は、養育費の件では、話が決裂していた。
出したい前嶋さんと、受けとりたくないひとみさん。

そして、更にそこに、くまさんがお客様を連れて帰宅した。
「ちょっとうちのもん取りに来たんだ」と、くまさんは言った。
ひとみさんとオーナーさんが泣いてたので、私がくまさんのお客様に対応した。
くまさんは、状況察して、必要なものを、玄関に１番近い部屋に持ち出した。
「宇佐美さ、ゴメン、リビング立て込んでそうだから、お茶とお茶菓子持ってきてくれない？」
「了解。私着替えてから持っていくわ。」
「いや、そこまでしなくていいよ。」
「ただ、私が嫌なだけ。すぐ行くから」
「了解」
今日は、熊谷家では、休める状況にはない。。