くまさんとうさぎさんの秘密
「宇佐美、サンキュ」と、俺は言った。
「どういたしまして。」と、宇佐美は答えた。
時田さんは、宇佐美を見て、言った。
「義明君て、一人っ子じゃなかったっけ?」
兄妹と思われたわけか。
「私は、住み込みの家政婦です。」と、宇佐美はすまして言った。
「ああ、家政婦さんか。若いのに、大変だね。」と、時田さんは言った。

宇佐美が出ていってから、時田さんは、俺に向かって言った。
「住み込みって、義明君、上下関係で女性の名前呼び捨てしたりしないよね。うさみちゃんだっけ?義明君の彼女??」
「名字が宇佐美なんです。微妙な距離だし、俺の家族にとって大事な人間なんで、余計なこと言わないで下さいよ。」
「了解。」
「今日は、バックアップ用にハードディスク一台残してきた。」
「それも、それさえなかったんですよね。」
「書き換えなんて想定してないんだよ。そこをまともに管理できる人間がついてた方が絶対いい。義明君には、めちゃくちゃ期待してる。機械の方だって、それようにちゃんと改良した方が良いんだろうけど、中野さんが何をいらったのか、理屈も何も分からない状況なんだ。」
「俺、それは多分分かりますよ。何でメタルが変形するのかの方はさっぱりなんで、結局全く分からないんだけど、その安全性とやらを無視したら、多分、うちの撮影機と接続してリアルタイムでの再生に対応するように書き換えられます。」
「義明君、安全性が先ね。最悪、部屋の中電子レンジだから。君たちが死んでもいいって話だけではすまないので。とくに、絶対に1つは止めるものを無効にしてるはずなんだ。他に何してるか本当に分からないから。」
「了解です。」
「あの人さ、客に物売ったことないんだよ。」
「了解了解」
「そのくせ、こっちにたいしてものすごいクレーマーで、こっちの説明書通りには使ってくれないから、社内でうるさがられちゃって。俺さ、トラブルあったときの2次対応担当なんだけど、彼女のとこだけ、定期検査も2次対応。俺は、彼女のこと嫌いじゃないけどね。」
「了解。それより、電子レンジがメタルで立体を再生する仕組みね。機械の事より、ソースのことで、できれば中野さんがいらうまえのもの理解したいです。」
そして、中野さんが休んだ2日間、俺も学校を休んだ。

「俺は、あの人嫌いじゃないよ。他のクレーム対応より、楽しい。進歩があるから。」
「ちょっと分かります。」


機械の納入業者の営業さんが、みんながみんな中身まで把握しているわけではない。
時田さんは、元々親父の学生だった。
親父はやっぱりすごい。止まっていたものが動き出す。




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