くまさんとうさぎさんの秘密
女の子、男の子
by宇佐美優那

出遅れた。ピアノ室の確保をしなけらばならない。
みんなに教えてもらって、私は、教授室の扉の名札を探していた。
順番に、あれでもないこれでもないと奥までやって来て、1つだけ、開きっぱなしの扉が気になった。
そして、、「ここだ!?」と、気がついたときには遅かった。中で、楽譜を奪い合いながら、「キャッキャ」と戯れ会う教授と女子学生とおぼしき女性。二人ともと、バッチリ目が合ってしまった。。

「何の用事ですか??」と、教授が低い声で言った。
「ピアノ室の利用申請に来たんです。」と、私は、答えた。
しぶしぶ手続きをしてくれながら、教授はすこぶる不機嫌だった。鍵の場所を説明しながら、彼は言った。
「僕は、君みたいな人間を信用しない。鍵は、必ず毎回返却が必要だから、心しておくように」
そして、彼は何か手続きのために、部屋を出ていった。
そこにいた、女性の方は、堂々としたものだった。彼女は言った。
「ピアノ室のピアノは、調律もされてないし、最悪よ。この部屋のピアノが1番良いピアノなの。」彼女は、さっきの事など無かったように、爽やかに笑った。そよ風が頬にあたったようだった。
「ピアノクラブに入るの?」
「いえ、軽音です。」と、咄嗟に私は答えた。

後日気が付いたのだが、多分、彼らは、扉が開けっ放しだったことに気が付いておらず、教授は私がのぞいていたと勘違いしたんだと思う。ホント、いい迷惑だ。

ピアノ室の利用申請を行い、正式には、軽音かピアノクラブへの入部が必要だったので、とりあえず、軽音に行ってみることにした。
「何の楽器やんの?」と、部長さんはめんどくさそうに言った。
「ピアノです。」
「は?ここ、電子楽器ひいてる人しかいないよ。」
「ピアノです。キーボードにチャレンジしても良いです。」と、私は、言った。保育士なら、そんなピアノしゃなきゃだめという芸術性が求められる訳ではない。
「ああ、そう。。」
部長さんは、後ろを振りかえって、大きな声で人を呼んだ。
「松野さん呼んで来て」
松野さんは、ショートカットの可愛いお姉さんだった。
「ジャズピアニストで言うと、誰のファン?」と、彼女は私に聞いた。
「ひとみさんです。」と、私は答えた。
「知らないな。マニアックなんだ。」
「でも、熊谷ひとみさんです。」
「分かった。いいよ。一緒に練習しようよ。」と、松野さんは言った。
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