くまさんとうさぎさんの秘密

兄貴

by熊谷 義明
八代さんからは、昼休みにコールバックがあった。
「義明、電話もらったか?」と、八代さんは言った。後ろで電車の音がした。
「電話しました。俺、今、ヤバいもの持ってるんです。友達からもらって。これくれた友達のこともあるし、相談のってもらえませんか?」
「お前、いまどこ?どれくらい急ぐ?」
「俺は今学校で、。どれくらい急ぐ話かは判断つかないです。これをもらったのは今朝で、俺は持ってるだけで、これが何か気がついたのはさっきです。」
「了解。16時半に、お前の下宿によろうか。」
「分かりました。」

八代さんも、タイプとしては、結論を急がない方だ。相談しても、適当なこと決めつけて何の解決にもならないことする大人とはまた違う。
結論を急ぐと、十分な事実確認もないままに決めつけて間違ってしまうことになりかねない。
ソクラテスの無知の知ではないが、判断つかないものはつかないものとして保留にするキャパシティも、事実確認への第一歩なんだろうと思う。こういう時に必要なのは、別の視点だ。
「歩きながら考えろ。」俺も、八代さんも、そう言われて育った。そういや、これも、ひとみ語録だ。

結論を先に見つけて、そこに向けてつじつまを合わせていくような人もいる。それが良い時もある。でも、俺は八代さんの方が話しやすかった。八代さんは、ちゃんと自分で分かってることしか下の者にも教えないから、いい加減なことを言うこともなかった。道場でも、俺が一番好きな兄ちゃんだった。
その頃、八代さんが機動隊に入ると思った人はいないだろう。その頃、八代さんの口癖は、
「何?分かんない。」だった。だから、八代さんは、あまり頭がよくない印象を持たれていた。けして、柔道も上手な方ではなかった。だから、八代さんをからかう人もいたけれど、そういう人に限って、多分、自分も分かってないということが分かってなかった。

今日の時間割は、最後の中野先生の講義以外全部受けれる。洋治が深入りしていないことを祈る。。


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