転生令嬢の異世界ほっこり温泉物語
失恋しても、距離を置けばいずれ忘れると思っていた。

前世でだってそうやって恋人の事を忘れたし、レナードに裏切られた事だって忘れられた。

それなのに、どうしてライの事を忘れられないのだろう。

ライがミント村を出る時だって、頑張って笑顔を作る事が出来た。

今までありがとうと、感謝を伝えられた。

それなのに、最近の私は涙をこらえる事が出来なくなってしまっている。

一人でここに来ては、気持ちが落ち着くまで延々と泣く。

その頻度は上がって来ていて、ライを忘れるどころか想いは募るばかり。

自分でもどうかしていると思うけど、手が届かなくなった人への気持は大きくなるばかりなのだ。

ぼんやりと足湯に浸かっていると、太陽が傾き辺りはオレンジ色に染まって来た。


「そろそろ帰らなくちゃ」

私はのろのろと立ち上がり、足をタオルで拭う。

明日私はミント村を出てトレヴィア王都に向かう。

かねてから婚約していたレナードとエミリーの結婚式に出席するためだ。


王都へ行く事は気乗りしないけれど、家族としての義務だから行かなくては。

ふたりに対してはもう何の感情もない。

姉としてきちんとお祝いの言葉を述べられると思う。




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