星屑の中、君の笑顔が輝いている。
外見からでは想像できないほど純粋で、今この時を大切にできる人だった。


今思えば、彼の言動一つ一つが理解できるのに、どうしてあの頃の私には理解できなかったのだろう。


当時の私は、無知だった。


彼がいなければ、この会社を受けてもいないし、貴重な休日を返上してまで、わざわざボランティアはしないだろう。


彼は、私に大切なことをたくさん教えてくれたんだ。



翌日、私が新幹線を2つ乗り継いでやってきたのは、鹿児島。


鹿児島中央駅で新幹線を降り、駅前の花屋で色鮮やかな花を何種類か買った。


そして、鹿児島中央駅からバスで約1時間半。


お茶畑の緑に囲まれた小さな集落が見えてきた。

のどかな田舎の風景。


いつも過ごしている都会とは時間の流れが違うと錯覚してしまうほど、のんびりとした空気に包まれていた。


バスを降りると、田舎独特の、牛の糞のような鼻をつく臭いがする。


本当なら鼻をつまんでしまうのが正しいことなのかもしれないけれど、私は決まって思いっきり深呼吸をする。


この臭いが、”ああ、帰ってきた”と思わせてくれるから。


たった2年過ごしただけでここが故郷だと思ってしまうのは、やっぱり彼がいたからなのかもしれない。


バス停から徒歩で約10分。

多くの人が眠る墓地に到着した。


その中から”黒崎家”と書かれたお墓に行き、先ほど中央駅で買ってきた花をお供えする。


「久しぶり」


まずは、いつもの挨拶から。


「昨日、川辺を掃除してきた。まだ蛍は戻ってこないみたい。なかなか難しいね。一度壊れた環境を戻すのって」


私の頬を撫でる爽やかな風は、彼の声。


『いつか必ず戻ってくるよ』と、彼が言ってくれているようだった。


「あとで、おじさんやおばさんに会いに行くね。おじさん達、今夜泊めてって言ったら泊めてくれるかな。無理だって言われても、無理やり泊まっちゃってもいいよね? 実は、もうお泊まり道具持って来ちゃった」


おどけて言いながら、パンパンに膨らんんだバックを黒崎くんに見せる。


なんて気持ちのいい風だろう。

私の頭を撫でて、優しく包み込んでくれる。


なんでだろう。

急に、人恋しくなった……。


「ねぇ、黒崎くん。会いたいよ……」



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