羊と虎

「小鳥遊杏奈は、神宮寺凱が好きです!付き合って下さい!」

「それ、僕の台詞・・」

驚いた後、苦笑している凱の顔を満足そうに見つめた。

「早い者勝ち!それからこっちも!」

勝ち誇った顔をして話す杏奈は、凱のネクタイをグイっと引っ張り屈ませたかと思うと、噛み付くようなキスをした。

「!?」

公衆の面前でしかも可愛らしい女の子にキスを奪われ、本日何度目か分からない驚きだ。

「ご馳走様」

一瞬の出来事に反応が遅れた凱を他所に、サッとネクタイを話して唇をペロリと舐めながら、満足そうな顔をする杏奈。

「あ、杏奈!」

自分を取り戻したが、恥ずかしさに右手で顔を覆う。

もう、どちらが女の子か分からない。

「自分が思うより回りは見てないって、でもこれ以上は見せたくないね」

そう言って凱の手を引いて停まっていたタクシーに乗り込んだ。





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