溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
でもどことなく幼い頃の彩音の面影がある。やっぱり彩音なの?

半信半疑で自分から声を掛けることができない。彼女も距離が近づくたびに、私の様子を窺っている。

そしてお互いの距離が一メートルのところで彼女は足を止め、恐る恐る聞いてきた。

「あの、間違いだったらすみません。……もしかして環奈お姉ちゃん?」

懐かしい呼び方に、彼女が彩音だと確信した。

「うん。……久しぶり、彩音」

照れ臭くなりながらも言うと、彩音の表情はパッと明るくなり、勢いよく私に抱き着いた。

「やっぱり環奈お姉ちゃんだった! 会えて嬉しい!!」

ギューッと私に抱き着いて喜びを爆発させる彩音にタジタジになる。こういう天真爛漫なところ、本当に変わっていない。

懐かれたり甘えられるたびに、私は今みたいにどう対応していいのか困り果てていた。

行き場を失った手が宙で止まる。そしておもむろに彼女越しに周囲を見れば、私たちは注目を集めていた。

「彩音、いいかな? 注目集めちゃっている」

恥ずかしくなり早口で言うと、やっと彩音は離れてくれた。

「ごめん、つい……」
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