溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
都内の大きな公園で必死にシャッターを押しながら、風で揺れる梅の花を撮っていく。

「うん……いい感じ」

出来栄えに満足し、再び満開の梅の花に目を向けた。

彼に告白されてから約束の十年目の春を迎えようとしていた。

彼は本当に約束通り、想いを告げに来るのだろうか。

「まさか、ね」

ポツリと漏れた声。

彼とは進学先が別で、高校を卒業後一度も会っていない。それなのに想い続けてくれているとは到底思えない。

それに友人伝いに彼の噂を聞いた。

進学先は有名大学の医学部。卒業後、研修期間を得て今は実家の佐々木総合病院で働いていると。

ゆくゆくは都内でも有名な佐々木総合病院の跡取りでしょ? 見合う人と結婚するはず。……ううん、もしかしたらもう結婚しているかもしれない。
< 3 / 279 >

この作品をシェア

pagetop