まずはお友達から〜目が覚めたらタイプの人に付き合って欲しいといわれました
「ねえ、空くん」

「何?」

出会ってまだ一月半だが、今彼が平静を装うとしているのが分かる。
そんな風にさせるのも、させたのも、私だ。

「今日、お泊まりさせてもらう話なんだけど」

「え、だめ?」

「ううん、そうじゃなくて…その、私が寝る場所って」

「客間があるからそこで寝てもらうつもりだけど」

「あ、そ、そうだよね…そうなんだけどさ…その…私が寝る部屋は必要ないっていうか」

彼が息を飲んだのが分かる。
手が震える。私の意気地なし。なんて遠回しな言い方だ。

「…一緒に、って事?」

「え!?あ、その…うん」

「それって、友達がする事じゃないよ?」

はっきりと告げる彼の声がどこか冷たい。
今まで曖昧にしてきた私のせいだ。もしこれで断られたとしても、しょうがない。

私はテーブルの上に置いてある彼の手を握った。

「…分かってる。
あのね、私。あなたと友達をやめたい」

「それってどういう意味か分かって言ってる?」

私は無言で頷いた。

「もう俺、止められる自信ないよ。いいの?」

「うん、ずっと宙ぶらりんにしてきてごめんなさい」

そこからは早かった。
彼が店員さんを呼んで会計の指示を出す。
店を出た瞬間に私の手を引っ張って、無言で彼のマンションに連れて行かれ、ドアを閉めるなり深いキスの応酬が始まった。

久しぶりすぎて大丈夫だろうかという不安はすぐになくなる。
私も彼に精一杯答えたくて夢中になった。

服を脱ぎながら、彼のベッドになだれ込む。
彼の手が下着にかかった瞬間、ハッとした。思わず「待って」と止める。

「どうしたの?」

余裕のない表情で言われてドキリとしながら、私はおずおずと口を開く。

「あの、下着もね…ちょっと気合いいれてきたからちゃんと見て欲しい、なんて」

「…それ、今言う?」

彼がいつもの様にタレ目を更に垂れさせて微笑む。私、この笑顔が

「好き」

「…俺も好き。出会った時よりも、ずっと」

下着姿は後でまた見せてと耳元で囁かれ、私は彼にそっと身を委ねた。
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