君が好きと言ってくれるなら、なんだっていい
言いきった凛月くんは「病院で大声出してごめん」と謝って、そのまま階段をおりていった。



「なんなんだよ、アイツ……」



凛月くんの背中を唖然とした顔で見送った浩ちゃん。



「あたしも今度こそ帰るね。また……「君のこと思い出す努力はしてみるから」



帰ろうと浩ちゃんに背を向けたあたしの背中にそんな言葉を投げかける。



「え?」


「ちょっと冷たすぎたよな、ごめん」



車椅子だから、あたしより低い位置からあたしを見上げる浩ちゃん。



「浩ちゃ……ん」



浩ちゃんの前では泣かないって決めていたのに、自然に流れ出てくる涙。



「……泣くなよ」



車椅子から手を伸ばして、あたしの手に浩ちゃんの手が触れる。



「思い出せないかもしれないし、また好きになることもないかもしれない。でも、少し頑張るからまた来てよ」



そんな言葉もう聞けないと思っていた。

浩ちゃんの優しさに触れて、いまはもうこれだけで十分だと思った。

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