銀狼と緋色のかなた
次の満月になれば、月の出ている間だけ、はるかは人形になることができる。

ヒロトは、はるかと出会ってからの一週間、"カナリアの森"を出ることもなく、はるかの側にいて食料を探したり散歩に行くのに付き合ってくれた。

「約2ヶ月後のブラッディームーンまでに運命の伴侶に出会わなければ、僕も人狼になる。でも、君がいるからそれもいいかもね」

優しい笑顔ではるかに語りかけるヒロトに、はるかは切ない目を向けた。

出会って間もないけれど

"あなたが好き"

明日は望月

"人形になったらあなたに伝えよう"

はるかは、一つ大きな決心をして、優しいヒロトの膝の上に頭をのせて眠った。

ヒロトを自分と同じ運命にすることはできない。

まだ、ヒロトには人形を保ったままで暮らしていけるチャンスが残されている。

はるかは、遠く離れたふるさとに残してきた一つ年下の従妹に思いを馳せた。
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