社内恋愛狂想曲
搾られてグチャグチャになったレモンを皿の上に放り投げて、レモン汁のついた親指をペロリと舐める。

まるで護のはらわたを素手で握りつぶして、滴る血を舐めている気分だ。

「だからさ……奪い返して絶対に浮気できないようにするか、もしくはこれでもかってくらい屈辱を味わわせて捨ててやるか。何かしら痛い目見せないと気が済まない。もちろんあの女もね」

「こわっ……。愛と憎しみは表裏一体やな……」

葉月は顔をひきつらせながらチューハイのジョッキを傾けた。

それくらいのことをしてやらないと……少なくとも私と同じくらい傷つけてやらないと、気が済まないに決まってる。

あんなに私を好きだって言ってたくせに。

私だって本気で護が好きだったのに。

あんな風に言われて浮気されてるって知った今だって、護が好きだからこそ悔しいし悲しいし、何も知らずに信じていた自分が惨めで情けない。

「それで志織はどないしたいん?奪い返したいんか、別れたいんか」

「……別れたくない」

「そんなに好きなん?」

「……うん」

好きだから別れたくない。

それがいたって単純な私の本音。

自分でもバカだとは思うけれど。

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