社内恋愛狂想曲
三島課長は怪訝な面持ちで、手に取った箸でイカの刺身を口に運ぶ。

「彼氏と喧嘩でもしたのか?」

「いえ、喧嘩ではないんですが……」

喧嘩の方がまだずっといい。

仲直りさえしてしまえば「こんなつまらないことで喧嘩してたんですよ、バカみたいでしょ!」なんて言って、後で笑い話にできるのだから。

だけど浮気は全然違う。

しかも私はその現場を見てしまったのだ。

三島課長!あなたの部下でもある私の彼氏は、私の部下の若い女と浮気してるんですよ!ふざけやがって!アラサー女なめんなよ、あはははは!

……なんて、笑って言えるようなことでもない。

どう言えばさりげなく話を進めることができるだろうかと、頭の中をグルグルさせる。

「佐野が知りたいのは男心というより彼氏の気持ちだろ?彼氏の気持ちが知りたいなら彼氏に直接聞いた方が……」

「まぁ、そうなんですけど……彼氏にはちょっと聞きづらくて……」

「俺は佐野の彼氏のこと知らないし、参考にはならないんじゃないかなぁ」

三島課長がなにげなく呟いた一言にギクッとした。

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