社内恋愛狂想曲
「瀧内……おまえってかわいい顔して、猛毒を吐くんだな……」

「私は残業終わりに、瀧内くんからごはん行こうって誘われて来たんやけど……?」

葉月が目元をピクピクさせながらそう言うと、瀧内くんはポケットから千円札を取り出してテーブルの上に置いた。

「帰り際に部長が、木村先輩と牛丼でも食べて帰れって、お小遣いくれたんです」

なるほど、この千円札は部長からのお小遣いなのか。

部長がお小遣いをくれるときと言えば、自分の都合で仕事が追い付かなかったり、すっかり忘れていた仕事に慌てて取り掛かって、部下に無理を言って手伝わせたときだ。

金額からすると、今日はそんなに難しい仕事ではなかったらしい。

私も営業部にいたときに何度か経験があるけれど、その辺は相変わらずなようだ。

「ちょうど今日は佐野主任と約束してたので、牛丼よりこちらで一緒にどうかと思って誘ったんですけど、まさか伊藤先輩がいるとは思いませんでした」

「本屋で時間潰してるときに伊藤くんと会って、その流れで。今日は護のことで散々奥田さんに絡まれたから、ちょっと伊藤くんとの仲を誤解しといてもらおうかと思ってね」

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