社内恋愛狂想曲
私だっていくら親に急かされても、好きでもない人とは結婚したくない。

ここは三島課長のためにも、付け焼き刃の嘘でもつかの間の休息でもなんでもいいから、この場を丸くおさめた方が良さそうだ。

私はそっと深呼吸をすると、覚悟を決めてできるだけ上品な笑顔を作った。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。潤さんとお付き合いさせていただいております、佐野志織です。よろしくお願いいたします」

滞りなくそう言って頭を下げたけれど、内心は嘘だとバレないかとか、勝手なことをして後で三島課長に怒られて呆れられるんじゃないかとか、いろんな考えが頭の中をすごいスピードでぐるぐる巡った。

三島課長は放心状態で、かろうじて立っているという様子だった。

「そういうことだから、おじさんも母さんも、今日はこれを食べたらお引き取りください」

瀧内くんがあまりにもさらりと言ってのけたので聞き逃しそうになったけれど、おじさんと母さんっていうことは……!

いうことは…………?

ダメだ、頭が混乱して考えがまとまらない!

しかしなんにせよ、その場は切り抜けたらしい。

ご両親はお皿の上の料理を美味しそうに食べた後、「またゆっくり会って話そう」と言い残して帰っていった。

ご両親がいなくなると、三島課長はドサッとソファーに身を沈めた。

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