社内恋愛狂想曲
見た目がいいのはわかってるけど、私が知ってる三島課長はもっと控えめというか、ほのぼののんびりした雰囲気で誰にでも優しい、いわゆる“いい人”だったのだけど、ここに来てまた三島課長の新たな一面が垣間見られた。

私が彼氏とは別れるつもりだと話してから、なんだかだんだん積極的になってきたというか、いつもの三島課長とのギャップにいちいち戸惑ってしまう。

だけどやっぱり三島課長は優しい。

三島課長は私の本物の婚約者ではないけれど、三島課長と結婚する人は、きっとずっと幸せなんだろうなと思う。

こんな風に私のことを一番に気遣ってくれる人がいつも隣にいてくれたら、それだけで幸せな気持ちになれそうな気がした。

「じゃあ……もう少し歩こうか」

「はい」

三島課長は私の頬から手を離して、その手でポンポンと私の頭を優しく叩いた。

そして私の手を引いてゆっくりと歩き始める。

私は三島課長の優しいエスコートで、ずっと忘れていたつかの間の恋人気分に胸をときめかせながら、暮れていく海辺の夜景に酔いしれた。

これが本当の恋人同士のデートなら、もっと甘くて幸せな気持ちになるんだろう。

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