社内恋愛狂想曲
「へぇ……壮絶な修羅場ですね」

「そこに運悪く現れた橋口本人に馬乗りになって殴りかかってわめき散らして、仕方ないから警察呼んでな。まだ早い時間だったから社内にかなりの数の人間が残ってたし、幹部の偉いさんまで出てきて大騒ぎだったよ」

予想はしていたけど、護はかなり手痛い洗礼を受けたようだ。

瀧内くんはきっとこうなることがわかっていて、護を会社に戻らせたんだろう。

「おまけに新人ちゃんを孕ませたのもそいつなんだってさ。新人ちゃんも父親の執念に負けて、とうとう白状したらしい。認知させて養育費は出させるけど、こんなやつに娘をやるわけにはいかんって親父さん激怒してた。でも左遷とか解雇はしないでこのまま働かせて晒し者にするんだと。絶対に辞めさせないって。恐ろしいよな」

「わーお……昼ドラみたい……」

確かに護がしたことを誰も知らない場所に左遷されるより、社内で後ろ指をさされ続ける方がよほど苦しいだろう。

それだけの罰を受けるほどのひどいことをしたのだから自業自得と言うほかないけれど、一度は本気で好きになった人だから、他人の好奇の目に晒され後ろ指をさされ続けるであろう護のこの先の人生を思うと、ほんの少しかわいそうな気もした。

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