社内恋愛狂想曲
「中には役職を利用して彼女に嫌がらせされてかなりもめた人もいるらしくて、それが原因で異動になったんじゃないかって言ってました。これって立派なセクハラとかパワハラですよね?もし訴えられたら、あの人どうなるのかな……」

瀧内くんはそう言って、冷たい笑みを浮かべた。

三島課長の啖呵と私のダメ押しだけでも下坂課長補佐にとってはかなりのダメージだっただろうに、もし瀧内くんがとどめをさしていたらどうなっていたのかと思うと身震いがする。

「うん……そっか……。とりあえずこれで三島課長のことはあきらめてくれるといいね」

「プライドの高い人ですし、あれだけ大勢の前で恥かかされたら、これ以上恥の上塗りするようなことはしないでしょう。週明けには会社中で噂になるでしょうからね」

それを聞いて自分自身もその渦中にいることに気付き、私はタクシーの天井を仰いで両手で顔を覆った。

「その噂話の中には私も三島課長もいるんだよね……」

「確かにそうですね。ここは潔くあきらめてください」

それはあきらめて噂の的になれということか?

本物の婚約者ならまだしも、私たちは偽婚約者だというのに。

「他人事だと思って……」

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