社内恋愛狂想曲
女の選択肢
3時の休憩時間に護からメッセージが届いた。

取引先でトラブルが発生して来週末に予定していた出張が急遽前倒しになり、これから一度自宅へ支度をしに戻ってから京都へ向かうことになったらしい。

帰りは日曜日の晩になるので、会うのは来週にして欲しいという内容だった。

仕事ならば仕方がない。

急な出張や休日出勤は営業部にはよくあることだ。

来週の月曜日に一緒に晩御飯を食べる約束をして、メッセージのやり取りを終えた。

急に予定がなくなったことだし、ちょうどいいから明日は千絵ちゃんと赤ちゃんに会いに行って、気は進まないけど実家に顔を出すことにしよう。



土曜日の午後、千絵ちゃんの入院している産院に足を運んだ。

ゆうべ詳しい場所や交通機関を調べるため母から聞いた産院の名前でネット検索すると、たくさんの口コミ情報が出てきたのを電車の中で思い出し、なんとなく読んでみる。

三代続いているという個人経営のこぢんまりとしたその産院は、出産入院費用は手頃なのに、個室だから他の患者に気兼ねなく家族や友人に来てもらえて、スタッフの腕がいいのはもちろんのこと衛生面の管理がよく行き届き、産前産後のケアが手厚く、おまけに食事がとても美味しいと評判で、地域でも一二を争う人気らしい。

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