社内恋愛狂想曲
何も迷うことなく、ただ単純に“好きだから”という理由だけで一緒にいられたらどんなに幸せかと思う。

私がもっと若ければ、その勢いだけで突き進めたかも知れない。

だけど私はもう甘い夢だけを見ていられるほど幼くはないから、結婚やその先にある現実を考えると臆病になってしまうのだと思う。

“好き”と“嫌い”だけで割り切れなくなるなんて、大人の恋はどうしてこんなにややこしいのだろう。

「うん……そうか……。そうだな……」

潤さんは静かにそう言って、私の頭をポンポンと優しく叩いた。

そして両手で私の手を取り、じっと私の目を見つめる。

「俺は志織が好きだから結婚したいと思ってるし、結婚しなくても志織がいればそれでいいとも思うけど、志織はそういうわけにはいかないだろう?もし志織にとって俺の存在が負担になるなら……今ならまだ、婚約者っていうのは嘘だって言うこともできる」

みんなの前でだけ婚約者であることを否定するのか、それとも本当に、私へのプロポーズは取り消すと言っているのか、どちらを意味しているのかがわからない。

私は黙ったまま潤さんを見つめて、少し首をかしげた。

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