社内恋愛狂想曲
明確な答えのない問題は、そう簡単には解けない。

現実なのにどこか現実味のないこの状況を、私はまだ受け止めきれていないのだから。

潤さんとの将来について冷静に考える時間も与えられず、たいした教養もスキルも持たない私が丸腰のまま戦いに挑んだところで、結果は目に見えている。

それなのに自分より強いものを恐れることも、好きな人に心の弱さを見せることすらも、私には許されなかった。

潤さんが私を好きだから苦しめたくないと言って私の元を去ったことで、私はまた新たな別の苦しみに苛まれている。

始まったばかりの潤さんとの恋を手放してしまったのは、ありのままの潤さんを受け止めることができなかった弱い私だ。

私が母のように強い心を持っていたら、潤さんがどんなに大きなものを背負っていたとしても、まるごと受け入れることができただろうか?

もしもこれがロールプレイングゲームなら、私はどんな困難にも屈しない強い心を持った勇者となり、『自分にとって一番大切なものを見つけろ』という偉大なる母の課したクエストをクリアして、自分より何倍も強く大きな最後の敵に、怯まず臆せず立ち向かうことができるのに。


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