社内恋愛狂想曲
「聞こえますか!」

肩を叩かれ、大きな声でそう尋ねられてまぶたを開くと、ヘルメットと白衣を着用した人たちが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

一体何が起こったのだろうと驚きながら起き上がろうとすると身体中に痛みが走り、白衣の人たちに「動かないで」と止められる。

「駅の階段の一番上から落ちて意識を失っていたんですよ。頭を強く打っている可能性があるので動かないでください。これから病院に搬送します」

ああ……思い出した。

私は電車を降りて会社に戻るところだったんだ。

階段を下りようとしたらめまいがして倒れそうになったところまでは覚えているけれど、そのあとの記憶はなかった。

ただひとつだけ覚えているのは、ひどく悲しそうにうつむく潤さんの顔だけだった。

どうやら私は階段を転げ落ちてしまったらしい。

道理で身体中が痛いはずだ。

それから救急隊員に担架で運ばれ、救急車の中で名前や年齢、倒れたときの状況などを簡単に質問された。

救急隊員は私の脈拍や体の外傷などを調べたりしたあと、受け入れ先の病院の手配をしている。

「私、出張の帰りでして、会社に戻りたいんですけど……」

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