社内恋愛狂想曲
関西人はお好み焼きの味と作り方だけでなく、切り方にまでこだわるらしい。

「ほら、どんどん焼くから冷めんうちに食べや」

葉月は大阪の世話焼きなオカンのように、私たちにお好み焼きの乗ったお皿を差し出した。

みんなで「いただきます」と手を合わせ、熱々のお好み焼きを口に運ぶ。

「……美味しい!」

「ホントだ、店で食べるのよりうまい!」

「葉月さん、美味しいです!お店出せるんじゃないですか?」

私と潤さんと瀧内くんが、あまりの美味しさに目を丸くして声をあげると、なぜか伊藤くんが得意気な顔で私たちを見た。

「だろ?葉月のお好み焼き、めちゃくちゃうまいんだ」

「あんたなんにもしてへんやん。なんであんたがえらそうに言うねん」

「なんでって、葉月はもうすぐ俺の奥さんになるから」

「なんやそら。キャベツくらい切れるようになってから言え」

伊藤くんと葉月の夫婦漫才さながらのやり取りに、また笑いが込み上げた。

二人が結婚して夫婦になったら、きっと他愛ない会話も漫才みたいに面白くて、笑いの絶えない家庭になるんだろうな。

そんなことを思いながらみんなで食べた葉月特製のお好み焼きは、今まで食べたお好み焼きの中で一番美味しかった。


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