社内恋愛狂想曲
ビールを飲みながら他愛ない話をしていると、伊藤くんが注文した料理が次々と運ばれてくる。

ひとつひとつがけっこうな大盛りだ。

本当にこの細い体のどこにこんな量が入るんだろう?

「佐野も酒のあてに適当につまんでいいよ」

「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて」

伊藤くんイチオシの餃子を箸でつまみ上げ、小皿の中のたれにつけて口に運ぶ。

口の中で溢れる肉汁とキャベツの甘味がたまらない。

「美味しい!」

「だろ?佐野なら喜んでくれると思ってたんだ。遠慮せずどんどん食え!」

「うん!」

実家で晩御飯を済ませてきたことを忘れそうなほどの美味しさで、ついつい箸が進んでしまう。

伊藤くんはよほどお腹が空いていたのかすごい勢いで料理を平らげ、餃子と焼売を追加注文した。

「すごい食欲だね。そんなにお腹空いてたの?」

「昼があまり時間とれなくてさ、コンビニのおにぎり2個急いで食っただけなんだよ。飢え死にするかと思った」

調子よく軽口をたたくところも相変わらずのようだ。

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