社内恋愛狂想曲
確かに潤さんが私に気持ちを伝えるまでの期間が長かったわりに、それから今に至るまでがあまりにも急展開だった。

護とはいずれ結婚するだろうと思いながら、3年付き合っても具体的な結婚話には発展しなかったのに、潤さんとはあっという間に結婚することになったのも不思議なことだ。

「“好きだ”の次はいきなり“結婚しよう”だったもんね。もし潤さんがもっと早く私に告白してくれてたら、今頃どうなってたかな」

“もしも”の話になんとなく興味が湧いてそう言うと、潤さんはお湯の中で私の右手を握る。

「それは志織次第じゃないか?志織は俺のこと恋愛の対象として見てなかっただろうけど、俺は志織と付き合いたいってずっと思ってたから」

「うん……まぁ、優しくていい先輩だって思ってたけど……。でもそれは婚約者になって欲しいって言われたときも同じだったから、もっと時期が早くても、やっぱり潤さんのこと好きになってたかも」

「だったら勇気出してもっと早く言えば良かったかなぁ……」

もしかしたら人生はなるようになっていて、どんなに願ってもタイミングが違えば望みは叶わず、逆にそのタイミングが来れば自然な流れで叶うのかも知れない。

だからきっと私たちも出会うべくして出会い、潤さんが私への想いを募らせ、私が潤さんの人柄を知って信頼関係を作るために必要な時間を重ね、なるべくして夫婦になるのではないだろうか。

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