社内恋愛狂想曲
マンションに着いて私の部屋に入ると、潤さんは部屋の中をぐるりと見回して顔をしかめた。

「壁紙のシミがすごいな。それにやっぱりジメッとして臭いがこもってる」

部屋の窓を開けて換気をしても、いやな臭いは部屋中に充満している。

きっと前に来たときよりも、部屋に残して行った衣類や布製品が湿気と臭いを吸収しているからだろう。

やはりこの場所に長い時間はいられそうもない。

「それでは志織さん、業者の方が来るまでにまだ時間がありますから、大家さんのお宅に行って解約手続きを済ませてください。もし志織さんが戻られる前に業者の方が来られたら、わたくしたちが代理で立ち会っても問題ありませんか?」

ゆう子さんはそう言ってくれたけど、そんな長い時間この部屋にいてもらうのは気の毒だ。

それにこの部屋は私が借りて住んでいたのだから、最後は自分で見届けたいという気持ちもある。

到着したら連絡してもらえるように業者に頼み、作業には私が一人で立ち会って、潤さんとゆう子さんには作業が終わるまで近くのファミレスにでも行って時間を潰してもらうことにした。

部屋の前で一旦二人と別れ、大家さんの部屋に行って解約手続きをしてもらう。

私が事故で怪我をしたことを知らなかった大家さんは、私の左腕のギプスを見て驚いていた。

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