社内恋愛狂想曲
やはり人間離れしているとしか言い様がない。

潤さんも呆気にとられてポカンと口を開けている。

「では出発します。移動しながらの食事になってしまいますが、お二人はゆっくり召し上がってくださいね」

「い……いただきます……」

私たちがそう言い終わらないうちに、ゆう子さんは車を発進させた。

本当に不可思議な人だけど、今日中に私たちを入籍させるという任務を遂行するために時間を惜しんでくれているのだと思う。

「じゃあ……せっかくだからいただこうか」

「うん」

私たちはゆう子さんの作ってくれたお弁当をありがたくいただくことにした。

ゆう子さんは料理は決して得意ではないと潤さんは言っていたけれど、どれも家庭的な優しい味がして美味しかった。

お弁当を食べながら、潤さんのお父さんが雑誌のインタビューで『仕事の後の妻の手料理が最高の贅沢』と言っていたことを思い出す。

きっと潤さんのお父さんは、料理そのものの豪華さや味の良し悪しではなく、ゆう子さんが自分のために一生懸命料理を作ってくれることや、ゆう子さんと二人で過ごす穏やかな時間を『最高の贅沢』だと言ったのではないだろうか。

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