社内恋愛狂想曲
「そういえば……結婚したってことは、もう佐野じゃないんだな。俺、これからなんて呼べばいいんだろう?“三島”って言うと潤くんのことも呼び捨てにしてるみたいし……勝手に“志織”って呼ぶと潤くんににらまれそうだから……“奥さん”……いや、やっぱ“三島さんの奥さん”かな?」

冷やかしなのか真面目に言っているのか、伊藤くんは首をかしげて考えている。

「それを言うと葉月だって結婚したら木村じゃなくなるでしょ?潤さんも葉月のこと“伊藤さんの奥さん”って呼ぶの?」

「潤くんは上司だから、そこは“伊藤”で良くないか?俺のことは“志岐”って呼ぶんだから」

「あっそうか、確かにそうだね。私のことは“佐野”でも“志織”でも、伊藤くんが呼びやすいように呼んでくれたらいいよ」

そう言ったあと、潤さんと葉月が眉間にシワを寄せていることに気付いた。

「“佐野”のままか“三島さん”が妥当じゃないか」

「どうしても名前で呼びたいんやったら、玲司みたいに“志織さん”って呼べばええねん」

どうやら選択肢に“志織”は入っていないらしい。

二人とも伊藤くんが私のことを“志織”と呼ぶのは面白くないようだ。

こんな些細なことでヤキモチを焼いているのだとすると、潤さんも葉月も、やっぱりかわいいと思う。

「じゃあ“佐野”のままでいいか」

「いいんじゃない?」

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