正しい『玉の輿』の乗り方
「その件につきましては、近々ご説明に伺わせて頂きます。はい……社長ですか? 社長はもうしばらく入院を………はい、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
どうやら社長であるお父様は入院されていて、会社も何かトラブルを抱えている様子。
樹さんは電話を終えると、深く息を吐き出しながらソファーへと腰掛けた。
「悪い。待たせたな」
「いえ。……何かあったんですか?」
「ああ、まあ。子会社の薬剤訴訟の件で色々とな」
樹さんは苦笑いを浮かべた後、すぐに話題を変えた。
「それより、そのスーツ。よく似合ってるじゃん」
「あっ、そうですか?」
「まさに馬子にも衣装。仕事ができそうに見えるよ」
樹さんがククッと笑う。
からかわれているのだと気づき、ここは敢えて無視することにした。
「それで、私は何をすればいいんでしょうか?」
「そうだな…。とりあえずデスクはそっちの部屋にあるけど、別に好きにくつろいでくれていいよ。たまに俺にコーヒー淹れてくれれば」