正しい『玉の輿』の乗り方
と、まあ。
そんなくだらないことをしていたせいで、結局、ギリギリの時間になってしまった。
コインパーキングから車を出してきた樹さんが、運転席の窓から顔を出す。
「ほら、早く乗れ」
「はい。すみません、お邪魔します」
私は助手席に乗りこみ、シートベルトを締めた。
「そう言えば、樹さん。着替えって……どうするつもりですか?」
この時間だと樹さんの家に寄るのは厳しそうだ。
「ああ、ワイシャツもネクタイも会社に行けばあるから問題ないよ。会社に泊まることが多いから、下着もちゃんと置いてあるし」
「よかった。下着は私がどこかのコンビニにでも走らなきゃダメかと思ってたので」
これでようやく肩の荷がおりたとホッとしていると、樹さんがボソリと呟いた。
「へえ。コンビニに下着とか売ってるのか。知らなかった」
「あっ、はい。一枚500円くらいで買えますよ。まあ、無地とかドット柄とか、地味な柄にはなっちゃいますけどね」
私がそう説明すると、樹さんがジロリと睨んできた。
「おまえ、ヤケに詳しいんだな」
「え? ああ、それはですね、私の前の」
「いいよ、別に。そういうことイチイチ言わなくていい。昔の男の話とかどうでもいいし」
樹さんはプイッと顔を背けて、不機嫌そうにハンドルを握った。