クールな次期社長と愛されオフィス
「堂島さん!」

「ひっ、は、はい!」

顔が完全にひきつって、声までうわずった。

な、何?

「本部長室に来て。部長がお呼びだ」

一気に血の気が引いていくのがわかった。

「ひょっとして本部長付秘書ってアコだったりして?」

マリカ先輩が面白そうな顔で私の腕をつついた。

そんな冗談にもうまく反応できない。

どう考えたって私が部長付秘書なんてことはまずあり得ないでしょ?

この呼び出しは、きっと副業の事を問い詰められるんだ。

あー、どうしよう!

私のどんよりとした気持ちとは裏腹に、秘書メンバー達からの熱い羨望の眼差しを受けながら本部室に向かった。

扉をノックしてそっと開ける。

こちら側に向いたデスクにもたれて腕を組んで立っている部長は紛れもなく例の彼だった。

はぁ~。

一つため息をつき、「失礼します」と部屋の中に入る。

扉の前で緊張のあまりうつむいたまま立ち尽くした。

「どうした?突っ立ってないでもっと近くへ」

いつもカウンター越しに聞いていた低音が響く。

「は、はい!」

うつむいたまま一歩前に出る。

「一歩だけじゃ意味がないだろう?」

そう言うと、宇都宮部長はこちらに歩み寄り私の腕を優しく掴んだ。

突然のことに声も出ない。

そして、なされるがままソファーまで連れていかれ座らされた。
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