クールな次期社長と愛されオフィス
全く実感がないまま私は部長の家で一緒に暮らすことになってしまった。

部長の家は都心の高級マンションで、私が最初に寝かされていた部屋を好きに使えばいいと言われた。

元々客間だったらしいけれど軽く15畳もあって一人で寝るには贅沢な広さだった。

クローゼットもタンスも余裕がありすぎて私の洋服全部持って来ても空き空き状態。

廊下の奥に広がるリビングはも今まで見たどんな家よりも広く、最初見た時はつい「体育館?」と叫んでしまったほど。

そんな風に一つ一つの贅沢な作りに感動している私を部長は目を細めて優しく見つめていた。

そして、時々私の頭や頬や肩に触れる部長の手がとても心地よくて、ドキドキしっぱなしの毎日。

固く封印していた自分の部長への思いがふとしたはずみで溢れてしまいそうだった。

溢れてしまうことが少し恐いような気がしていた。だって未だに夢見心地のまま。

こんなに一緒にいる時間が増えたのに、この状況が信じられないでいたから。

だけど、いつも優しくて、こんなにも誰かに大事にされているという実感を抱いた相手は部長が初めてだった。

ふと、本当にこんなことしていて大丈夫なのか不安がよぎる。

上司と部下が同居してるなんて。

しかも禁止されている副業までしている私は、こんなこと上層部に知れたら一発でアウトだ。

それに、社長に目を付けられている部長も。

部長に迷惑をかけられないということもあって、余計に私の気持ちは前に進めない。

部長が心配だったから時々確認するけれど「そんなこと全く問題ない」と笑って言われるだけ。

今のところ会社にはばれていないようだけれど、いつ、どこで社長の耳に入るかもしれない。

そんな緊張した生活も気がつけば一緒に住むようになって一ヶ月が経過していた。






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