クールな次期社長と愛されオフィス
「とても素敵な空間とお料理で、どれもオーナーのきめ細やかな思いが詰まっていました」

私はまたカフェの様子を思い出しながら、できるだけ詳しくその感動を部長に伝える。

部長はワイングラスを片手で揺らしながら、目を細めて私を見つめながら聞いてくれた。

「そうか、それはよかった。俺も今度覗いてみよう」

「はい、是非行って見て下さい。オーナーさんとお話もして名刺までもらっちゃいました。何かあったらいつでも相談に乗ってくれるそうです」

「へー。アコもなかなかやるな。営業も向いてるかもしれない」

部長は嬉しそうに笑いながら、私が手渡した名刺に目をやる。

「私、今回訪れたカフェのお陰で部長が言ってたオリジナリティの意味がようやくはっきりと見えてきたような気がします」

「うん。期待しているよ」

「あの」

「ん?」

部長は窓の外に目をやりながら答えた。

「あの」

「なんだ?」

ようやくこちらに顔を向けてくれた。

なんだか照れくさいと思いつつ、今日買って来たお土産をテーブルの上に出す。

「これまでも色々と、それから今日のカフェを教えて下さって、本当にいつもありがとうございます。これ、ほんのお礼の気持ちです。とてもきれいだったから」

そんな風に面と面向かってお礼なんて言ったことがなかったから恥ずかしくてうつむいたままその袋を差し出した。

「俺に?そんな気を遣わなくていいのに」

そう言いながらも部長の声はとても嬉しそうだった。



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